チーミング Teaming -学習する組織-
チーミング
要約
様々な要素が絡み合い、複雑化する社会。そして仕事。 解決のためのマニュアルは存在しない。スーパーマンもいない。 チームで解決しよう。 チームが学習する組織となり、絶え間なく出てくる課題を解決していくにはどうアプローチすれば良いのか。
チームが機能するとはどういうことか――「学習力」と「実行力」を高める実践アプローチ
- 作者: エイミー・C・エドモンドソン,Amy C. Edmondson,野津智子
- 出版社/メーカー: 英治出版
- 発売日: 2014/05/24
- メディア: 単行本
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チームの重要性、そしてチームをうまく機能させるための土台について詳しく書かれた良書。
チーミングって残念ながらネットワーク用語のほうが強くてググっても上位に出てこないんですよね。 (複数LANを"束ねる" 束ねて速度を挙げる or 冗長性確保 で、チーミング)
背景
なにもかもが複雑になっていく。この時代に一人では何も成し得ない。不確実で予測不可能な現実。
そこで必要なのは学習である。 絶えず学習し、それを仲間と共有していく。 チーミングはそれを可能とする土台である。 今までのやり方は通じない。マニュアルはない。マニュアルを作っている時間もない。複雑すぎて作れない。でも課題を常に解決しつづけなければならない。そうしないと生き残れないのだ。 学習しながら実行する。それが現在の不確実で予測不可能な現実に対処する術である。
日本にはこんなことわざがある。三人寄れば文殊の知恵。 凡人であっても三人集まって考えればすばらしい知恵がでるものだというたとえである。
テイラーとフォードよ、さようなら。複雑適応系よ、こんにちは
組織におけるマネジャーの無意識の対応は、かつてない、互いにつながり合う、知識集約型の仕事の世界が必然とするものに、不意打ちを食らわせてしまう。 伝統的な経営管理論は、すでに見たとおり、とかく管理を課題評価したり組織を機械的なシステムとして扱ったりしてしまうのだ。
学習は不可欠であり、究極的には、支配を手放すことが求められる。 真のマネジメントとは、解放すること。
管理手法 | 実行するための組織づくり | 学習するための組織づくり |
---|---|---|
雇用 | 体制順応者、規則を守る人 | 問題解決者、試みを行う人 |
訓練 | 学習してから行動する | 行動することから学習する |
業務評価 | 「あなたは」適切に行ったか | 「私たちは」学習したか |
作業体制 | 専門知識を分類する | 専門知識を統合する |
作業員に与えられる自由裁量権 | 選択肢の中から選ぶ | 試行錯誤を通して試みる |
エンパワーメントの手法 | 特別な状況が生じてやむを得ない場合は、従業員は台本から離れることができる | 台本はない。即興で行動せよ! |
プロセスの目標 | 異なる意見を追い払う | 異なる意見を使って分析し進歩する |
休憩時間 | 天気について | 仕事について |
事業目標 | 今すぐ利益を出せ | 利益はあとで出せ |
うまくいくとき | 前方の道がひらかれている | 前方の道がひらかれていない |
実行するための組織づくりを体現したのがテイラーとフォード、学習するための組織づくりを体現しているのが、Google、GE、そしてトヨタだ。
チーミングを可能にするためには、既存の組織文化を変える必要があるかも知れない。 とくに変わるべきはマネージャーだ。マネージャーが旧来の考え方から離れられないのだとすると、その組織は永遠に変われない。
変化をひどく難しくしているのは、仕事に対する時代遅れの考え方の要素を、私たちのほとんどが、およそ無意識に持っているということだ。 知識ベースの経済がうまくいくのは、あらゆる階層の労働者を、誇りを持つ、自分で決定を行う大人へ回復させたときだけなのである。
チーミングの基本となる個人のスキル
様々な分野からの意見をまとめること、専門知識が多分野にわたるためにメンタル・モデルも多様である中でコミュニケーションを図ること、 加えて、大勢がともに仕事をする場合にどうしても生まれる意見の衝突を管理することである。
基本的には、
- 学ぶこと(質問する、好奇心を持つ、傾聴する)
- 教えること(コミュニケーションを図る、結びつける、明らかにする)
に関連する対人能力の向上の問題である。
効果的なチーミングの4つの柱
率直に意見を言う
チーミングの成功は、個人間でじかに、誠実な会話ができるかどうかにかかっている。会話には、質問すること、意見を求めること、過ちについて話すことが含まれる。
協働する
協働の姿勢と行動があって初めて、チーミングはプロセスを推し進めることができる。これは、チーミングを行う所定のグループの内でも外でも言えることである。
試みる
チーミングでは何度も試みが行われるが、これにより個人と個人の交流につきものの新奇さと不確実性を受け入れることとなる。
省察する
チーミングでは、プロセスと結果をしっかり観察し、明瞭に質問し、よく話し合うことが重視される。これは毎日であれ、毎週であれ、あるいはそのプロジェクト特有のタイミングであれ、仕事のリズムに応じて常に行われる。
チーミングを行うメリット
- パフォーマンスが上がる
- 職場環境が向上する
チーミングが成功する場合の状況
- 行動1 学習するための骨組みをつくる
- 行動2 心理的に安全な場をつくる
- 行動3 失敗から学ぶ
- 行動4 職業的、文化的な境界をつなぐ
チームメンバーの役割
権限を与えられたチームか、それとも技術に長けた補助スタッフか
言うまでもなく、権限を与えられたチームのほうが学習し、カイゼンし、よりパフォーマンスがよくなる。
専門技術の上での深いかかわりと、気持ちの上でのかかわり
メンバーは理由があって選ばれているのだと明確に伝えることが重要である。
プロジェクトの目的を伝える
向上心あふれる目的か、受け身で消極的な目的か
プロジェクトの特徴 | 学習フレーム | 実行フレーム |
---|---|---|
プロジェクトを実行するときの、リーダーの自身に対する見方 | 待ち受ける困難を克服するにあたり、重要な立場にあると同時に相互依存している | するべきことを承知しており、何をすべきか他のメンバーに命じる立場にある。 |
プロジェクトを実行するときの、リーダーの他のメンバーに対する見方 | 大切なパートナーであり、待ち受ける困難を克服するために重要な意見をくれる | 脇役、あるいは部下 |
プロジェクトが生み出す状況に対する全体的な見方と、プロジェクトに伴う暗黙の目標 | やりがいがあり、わからないことに満ちていて、新しい考え方や技術を試すチャンス。暗黙の目標は次に何をすべきかを知るためにできるだけ多くを学ぶことである。 | ふだんと同じ、または「それほど違わない」。暗黙の目標は、仕事を片付けることである。 |
理想的な従業員の問題点
理想的な従業員であれば、持ち上がるどんな問題に対してもやすやすと対処できる。(むろんマネージャーの手を煩わせることなく)。大騒ぎすることなく、黙ってミスを直す。 そもそもミスをしない。なんでもそつなくこtなす。組織やプロセスに全力を注ぐ。
この従業員の問題点は、そういう人は組織が学習するのを困難にしてしまうことである。
学習する組織を作りたいと思っているマネージャーは、自分の考える理想的な社員をリフレーミングし、現状をそのままで良しとしない、うるさいほど質問する人を歓迎できるようにならなければならない。
心理的に安全な場をつくる
対人不安がないように努めなければならない。
失敗が緩和される。
チームワークが上手くリードされたチームのほうが、ミスの回数が多い。なぜか。 上手くリードされたチームは、心理的に安全な環境のおかげで、ミスについて報告して話し合うことがたやすくない、結果としてそれが日常茶飯事になるのである。
心理的安全を高めるためのリーダーの行動
無理に心理的安全を高めようとしてはいけない。リーダは以下の行動をとる。
- 直接話のできる、親しみやすい人になる
- 現在持っている知識の限界を認める
- 自分もよく間違うことを積極的に示す
- 参加を促す
- 失敗は学習する機会であることを強調する
- 具体的な言葉を使う
- 境界を設ける
- 境界を超えたことについてメンバーに責任を負わせる
境界を超えたチーミング
チリのサン・ホセ鉱山の事故の話。 驚異的なチーミングによって、33人の作業員が事故から70日も経過したが全員無事休出。
目に見える境界と目に見えない境界
境界とは、アイディンティティを同じくするグループ同士の間の区切りのことである。
当たり前になっている思い込み
専門化とグローバル化
境界の3つのタイプ
複雑な組織でのチーミングに突きつけられる、よくある3つの境界
- 物理的な距離・・・分離による相違
- 地位・・・格差による相違
- 知識・・多様性による相違
境界を超えたコミュニケーションをリードする
上位の共通目標を設定する
学習の機会として共通目標をフレーミングすると、立場を対等にするのに役たち、意見を率直に言いやすくなる。
関心を持つ
他の人達の心を動かすものについて私たち自身の興味を深めていくことで、他人の考えや感情に対する関心を安心して表現できる環境をつくれることに一人ひとりが貢献できるようになる。
プロセスの指針を示す
どのような複雑なチーミングにおいても、全員が従おうと思うプロセスの指針を確立することが重要である。境界を管理するための戦略も不可欠だ。
チーミングと学習を仕事に活かす
学習しながら実行することと効率を追求しながら実行することの違い
効率を追求しながら実行する | 学習しながら実行する |
---|---|
リーダーは答えを持っている | リーダーは方向性を定める |
決まった作業プロセスが導入される | 出発点として意図的に仮の作業プロセスが設けられる |
変わることは大変な労力を伴う仕事だと考えられる | 絶えず少しずつ変わることが日常的になる |
一方通行のフィードバックがなされる | 双方向のフィードバックがなされる |
社員の判断は阻止される | 社員の判断は不可欠である |
上司を恐れるのは普通のことである | 不安があると試みや分析や問題解決が妨げられる |
目標:今日にも利益を勝ち取ること | 目標:長期的な価値を生み出すこと |