Training for D-Day

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リーダーシップとニューサイエンス

を読みました。

エッセンスと自分の考えは、Noteに記載しました。

note.com

ここでは、この本で重要だと思ったところをテキストに起こしたものを下記にコピペします。

はじめに

・ニューサイエンスの発見と論理は、宇宙の本質的な規則正しさとビジョン、創造的なプロセスとダイナミックで切れ目のない変化がありながら秩序を保つというビジョンに私を目覚めさせた。

・秩序と変化、自律と制御は、大きく対立するものではない。変化と絶え間ない創造があってこそ、秩序と能力が維持されるいう世界だ。

・ニューサイエンスが描く世界は、科学のみならず、たくさんの分野で私たちの信念や認識を変化させている。

・新しい組織論、リーダーシップに関しても、ニューサイエンスからの考え方を取り入れることにより、全く違った景色が見えてくる。

秩序ある世界の発見

雄大大自然溢れる川が流れている(ここではコロラド川)。この川が組織について教えてくれることは何か。

・組織には、川のような信念が欠けている。目的はさまざまな方法で達成できるのであって、意思とビジョンに焦点を当て、形を現れるにまかせて、消えるにまかせるのが最善の方法だ、という信念だ。

・私たちは、催眠術にでもかかったように、組織の構造を強く、複雑につくる。そうしないと生き残れないといわんばかりに。

・私の知っている組織の大半は『要塞』と形容するのがふさわしい。防衛という言葉が徹底している。

・生命の本質は、創造にある。この生命が自己を創出する能力は、聞き慣れない『オートポイエーシス(autopoiesis)』という新しい言葉で表現されている。ギリシア語でautoは自己、poiesisは製作・生産の意味だ。オートポイエーシスは、生命が自己を創出し再生する基本的なプロセス、つまり、成長し変化するプロセスである。

・生命系とは、『常に自己再生を要求している、けっして休むことのない構造』。生命系は自己を生み出し、その自己を保存するために変化する、というパラドックスが含まれる。変化は、自己保存のためには変化するしかないと有機体が判断したときにだけ促されるというわけだ。

・化学の分野では、ノーベル賞を受賞したイリヤ・プリゴジンは、無秩序から新しい秩序が生まれる場合がある、という逆説的な真実を教えてくれる。これを『散逸構造』と呼ぶ。

プリゴジンは、エネルギーの減少を伴う散逸的な活動が、新しい秩序の形成に必要だということを発見した。

・散逸はシステムの死には繋がらなかった。それはシステムが、現在の形を手放し、変化した環境の要求にもっと適した形に再編されるためのプロセスの一部だというのだ。

散逸構造においては、無秩序から新しい秩序が生まれる場合があり、成長はバランスではなく、不均衡から現れることが立証されている。私たちが組織において最も恐れていること・・・中断、混乱、カオス・・・を、法界の前触れと解釈する必要はない。むしろこうした状態は創造性を目覚めさせるために必要なのだ。

・混沌からの秩序

・もし人間が機械なら、管理の追求は理にかなっている。だが、もし、人間もほかのあらゆる生命体に内在するのと同じ力で生きているとしたら、固定的な構造によって管理を押し付けようとするのは自殺行為だ。

・生命において、問題は管理ではなく、ダイナミックな関連性である。

量子の時代のニュートン的組織

量子論にショックを受けない人間は、それを理解していない人間だ。 by ニールス・ボーア

素粒子とは、『本質的には、ほかの物体に向かって動こうとする関係の集合』だという。

・ほかの粒子から独立して描くことのできる粒子は1つもない。

・関係に着目すれば、私たちは予測可能性をあきらめ、可能性に心を開く。

・他者との関係から独立して存在している人間はいない。

・あいまいなのは、私たちだけではない。宇宙全体がそうなのだ。

・戦略は『ジャストインタイム(必要なものを必要なときに)』であるべきで、『一般常識、レパートリーの広いスキル、迅速に学習する能力、直感の信頼、損切をスマートに行う能力、これらに投資を惜しまないことが支えとなる』by カール・ワイク

・予測は反応より重要ではない by ジャック・ウェルチ

素粒子は、たしかに、時間や空間を超えて存在する目に見えない関係によって影響されるということを証明した。 by アラン・アスペ

・かつて科学者は、光の速度より速く移動する物質はないと考えていたが、2つの電子は目に見えない関係で結ばれている。これは光の速度より速い。

・量子飛躍は、量子の相互関係性を端的に示す例だ。専門的には、量子飛躍は突発的なで不連続な変化であり、中間的な段階をまったく通過せずに、電子がある軌道から別の軌道にジャンプすることだ。電子は、ある場所にいたかと思うと、次の瞬間には別の場所にいる。量子飛躍のイメージは、組織や社会変革で体験してきたことをほかの何よりも正確に反映している。

ふるまいを形づくる見えない場

・組織につきものの謎に対する説明として納得がいくのは、場の理論だと思われる。

・場についてはいろいろな考え方がある。重力場は、時空のゆがめられた構造だと考えられる。電磁場は、電磁放射として現れる乱れを生み出す。量子場は、おそらく粒子ごとに異なる場だが、エネルギーであり、2つの場が交わる時に形となる。だが、こうした理論に共通しているのは、場とは、その効果を観測しなければわからない、空間の見えない力、見えない効果だという考え方だ。

・組織場の可能性について考えることは、何かたとえてものを考えるおもしろい練習になる。

・ビジョンを場として見たらどうなるだろう。

・ビジョンの策定というのは、場所ではなく力を、目的地ではなく影響を作っていることだと認識するところから出発することになる。

・場と同じように、理念というものが組織の中で現実に力を発揮することを私たちが理解すれば、なぜコンセプトには実行するだけでなくコントロールする力もあるのか、それを理解するためのイメージをもっとはっきり持てると思う。イメージが変われば、人が何にどう注意するかも変わるのだ。

・場の視点で組織を見れば、私たちは真っ先に明快さを気にかけるようになる。そして、場が誰にでも開放されていて、情報がどこででも入手できる、そういう環境を確立しなければならない。

・今や、見えないものを受け入れるときだ。物質が非物質になる可能性のある世界、影響が目に見えないまま私たちの間を動く世界の中で、場の影響をじっくり考えてみてはどうだろう。

宇宙の持つ全員参加の性質

・観測されていない量子の現象は、観測されたものとは根本的に異なる

シュレーディンガーの猫

・生きた猫を箱に入れる。箱には隙間がなく、外からは中が見えない。箱の中に装置が入っていて、毒かエサのどちらかが出る。どちらが出るか確率は50%。時間が経つ。箱の中は観測されないまま、しかけが始動する。猫は運命を迎える。

・観測によって粒子か波動のどちらかとして崩壊するまで、電子が波動と粒子の両方の性質を持つのと同様に、シュレーディンガーは、人が観測する瞬間まで猫は生きており、かつ死んでもいると主張した。箱の中では、誰も見ていなければ、猫は確率波動としてのみ存在する。

・観測するまでは、猫が生きているか死んでいるか示すことは不可能だ。生死を決めるのは、観察という行為だ。

・人が箱の中をのぞくまでは、猫は確率としては生死が重なり合った状態で存在する。人の好奇心が猫を殺しもし、生き返らせもするわけだ。

・世界が存在し、客観的に不変なものはなく、しかも私が姿を現す前から存在しているなら、いったいそれは何だろう。最善の答え世界は可能性にすぎず、私なり、あなたなり、それを観測する人間がいなければ存在しないということのようだ。世界にたくさんある事象のすべては、潜在的そこに存在しているのだが、誰かが見たり、感じたりすることで、初めて現実となって見られたり、感じられたりするようになるのだ。 by フレッド・アラン・ウルフ

・ジョン・アーチボルド・ホイーラーは、参加型の宇宙を熱心に提唱した。参加型の宇宙とは、ある情報を探す行為が、探そうとした情報を生じさせ、同時に他の情報を観測する機会を排除するような環境だ。ホイーラーによれば、宇宙全体が観測から現在をつくるだけでなく、過去をもつくる、参加型のプロセスだ。あらゆるものごとに現実性を与えるのは、何が起きているか気づいている観測者の存在なのだ。私たちは一つの様相を実験することを選択するとき、ほかのものを見る能力を失う。何かを計測するということは、常に得る情報よりも失う情報のほうが多い。それは、決して後戻りできない。他の可能性を永遠に箱から閉め出す行為なのだ。

・私たちが現実と呼ぶものは何であれ、私たちが参加する積極的な構築行為を通じてのみ、私たちに姿を見せる。

・参加というものが、組織の戦略としてなぜそれほど有効なのか・・・たくさんの観測者がたくさんの多様な反応を引き出し、観測んきは本物の豊かさが加味される。多様な解釈が共存する組織は、何が起きているか、何をすべきかの感覚が磨かれる。そうした組織はさらに知的になる。

・人の行動原理とは、『人は自分が創造したものを支持する』ことだ。

・所有意識を醸成する最善の方法は、実行する責任のある人に自分自身で計画を立てさせることだと私たちは知っている。計画の素晴らしさや正しさはどうでもいい。計画を立てるプロセスに関わらせていないのに、署名を求めてもうまくいくわけがない。

・賢明になるために、もっともっとたくさんの目が必要なときに、なぜ参加にためらい、そのリスクについてばかり心配するのだろう。協力して世界を創造しようとしているときに、なぜ現れてくる力強いビジョンと未来に抵抗するのだろう。生産的な生命のダンスに参加するように招かれているのに、なぜ安定や予測可能性を選んでしまうのだろう。そしてなぜ、猫は死んだと予測して箱の中をのぞき込むのだろう。猫を生かすも殺すも、私たちの観測の力次第なのに。

自己組織化という逆説

・あらゆる構造は散逸構造をとっている。

・科学者のなかには、芸術の中の螺旋形が、変化、創造の後の散逸、次なる新しい秩序という典型的な体験を表現しているのではないかと考える人達が以前からいる。

・自己組織化のダイナミクスは、あらゆる開放系、生命体に見られることがはっきりしている。最も重要な点は、私たちに、新しい世界観を与えてくれることであり、『絶え間ない変化を背景にして常に新しい多様性と常に新しい秩序を生み出す世界の性質を私たちに感じさせる』点だ。

・自己組織化システムが不安定を受け容れることは、あまりにも予測が成り立たず、気まぐれにさえ見えるかもしれないが、そうではない。自己組織化システムは、深い中心、つまり自分が何者で、何を必要とし、自分を取り巻く環境で生き残るには何が要求されているかをはっきり知っていることから安定する。

・エネルギーをより効率的に利用する種が生き残る。多産の種に比べれば、ぐっと少ない数の子どもしか産まない哺乳動物が、今では反映している。

・いつのまにか優勢になるのものは、外部の影響ではなく、システム自身の自己組織化のダイナミクスなのだ。環境とパートナー関係にあるからこそ、システムは環境から次第に自律していき、環境を次第に『自分たちが生活しやすい』資源の豊かな場所に変える新しい能力も向上していく。

・あらゆる自己組織化システムによって不可欠な第二のプロセスは、自己準拠のプロセスだ。環境が変わり、自分も変わる必要があるとシステムが気づくとき、システムは常に自己矛盾がないように変化する。これは、行動のオートポイエーシス、つまり、自己を維持し、自己を創出することに専心するシステムだ。

・単純なエネルギー散逸的な構造の自然のダイナミクスは、人間の世界ではあきらめがちな楽観的な原則を教えてくれる。自己組織化の自由に任せるほど、秩序が保たれる。by ヤンツ

・システムが変化し、進化すれば、環境にも影響を及ぼす。他者に起きる変化の影響をうけずにいることはけっしてできない。科学者はこれを共進化と呼ぶ。組織とその環境は、お互いがよりよく適合することを目指して同時に進化している。進化はあらゆるレベルの自己超越の結果である。進化は、基本的に未決定のものであるが、ダイナミクスと方向は自分で決定していくのだ。このダイナミックな相互関連性によって、進化は自分自身の『意味』をも決定する。

・秩序と自由、存在と生成、現在と未来という一見矛盾する2つのものごとが、渦を巻いて一つの新しい、だが、古来からあるイメージになる。静止、バランス、平衡、これらは一時的な状態にすぎない。持続するのはプロセス--- ダイナミックなプロセス、適応のプロセス、創造のプロセスなのだ。

宇宙の創造的エネルギー -情報-

・秩序がつくられるか否かは、情報が創造されるか否かにかかっている。・・・秩序創造の本質は、情報の創造にある。by 野中郁次郎

・情報とは何か、情報はどのようにふるまうのか、情報を仕事にどう活かせばいいのか

・問題の核心は、私たちが情報を『もの』として、物理的な存在として扱ってきたことにある。

・私たちは情報をまるでわかっていない。

・進化と秩序の新しい理論では、情報はダイナミックに変化していく要素であり、理論の中心を占めている。情報がなければ生命体は新しいものを生み出すことはできない。情報は、新しい秩序が生まれるのに絶対に欠かせないものだ。

・生物は、安定した構造ではなく、情報を統合していく連続的なプロセスだ。人が自分のイメージをつきつめて考えるとき、尋ねることではっきりさせていくことが端的な例だ。自分は何者か。自分は情報を処理する物理的な構造物か、それとも自己を物質的な形にまとめあげる非物質な情報か、と。

・私たちは誰しも、時間的、空間的に不動の存在というより、流れる川にずっと近い存在なのだ。

・ボディマインドにはどこをとっても2つのものーー情報と物質がセットされている。両者のうち、情報のほうがパートナーである物質より寿命が長い。・・・この事実を見ると、記憶は物質より不変であることがわかる。では、細胞はどうだろう。物質を自分の周りに組み立てて、一定のパターンを描いているのは記憶である。体は記憶にとって我が家という場所にすぎない。

・生命体は情報を利用して物質を形にまとめあげる。私たちが目にする物理的な構造はすべてその結果だ。情報(information)の役割は、『in-formation(形づくる)』という語源に示されている。

・絶えず進化する、ダイナミックな宇宙において、情報は重要だが目に見えない役割をはたしており、物理的な形を取るまでは人の目に見えないものだ。情報は私たちを操っているように見える。

・情報は自らを生成できる。その点で資源としては独特の存在だ。それはいわば組織の太陽エネルギーだ。それも人が解釈するたびに新しい子孫を増やす可能性がある。無尽蔵のエネルギーだ。共通の状況でコミュニケーションが発生するかぎり、繁殖力が衰えない。この新しい子孫の誕生には自由が必要だ。情報が自由に循環し、新しいパートナーを見つけられる環境でなければならない。情報を最も活発に生み出す環境は、カオスという自由だ。カオスでは一瞬一瞬が新しい。

・古いマネジメントは、この情報をコントロールしようとする。抑制のきいた情報にしておく。

・しかし、もし情報を組織の活力の源泉として機能させたいなら、コントロールという黒いマントを脱ぎ捨てて、情報が欲しがっている自由な動きを信頼しなければならない。

・情報を処理し、情報に気づき、情報に反応する能力があるなら、システムには知性があるということになる。

・グレゴリー・ペイトソンは、『精神』の定義に同様の基準を設けた。フィードバックのために、自己制御のために、情報を生成し、吸収する能力がある存在は何であれ、精神があるとする。これらの定義は、私たちが組織の知性というものを考える手段となる。

・生活の一部としてあいまいさや驚きを受け容れるのを拒否するのは、予測やコントロールが可 能だという神話にしがみついているからだ。私たちはいまだに機械の全部品をコントロールでき ると信じている。あらゆる場所で何が起きているか知ることができる(また知らなければならない) といまだに信じている。システムを一つにまとめているのは自分であり、自分のリーダーシップ だといまだに信じている。あらゆるものに秩序をもたらしているのは、自分の知性であり、組織 全体に幅広く分散している知性ではない。だから、ものごとが混乱したり、あいまいになったり すると、私たちが不安になるのももっともだ。あいまいさは私たちにもっと不確定要素を考える ように要求し、混乱は私たちに「わからない」と言わせようとしているのだ。すでにそうだが、 ストレスを感じ、緊張しながら、さらに多くの要素をコントロールするなどとても無理だと私た ちにもわかっている。私たちのコントロールの限界が伸びたり縮んだりしているうちに、突然、 私たちは管理不能に陥るのだ。そのような精神的重圧の下では、新しさを締め出し、過去にうま くいったわずかなものごとを盲目的に固守するのも無理はない。

・私たちのリーダシップのスキルを超えて、というより、にもかかわらず、システムは自己組織化して自分の仕事をやりとげる。

・組織のあらゆるレベルで、そしてあらゆる活動のために、私たちは、情報へのアクセスをもっと増やし、情報の流れを制限しているコントロール機能を縮小することに挑むべきだ。

・情報へのアクセスを増やし、刷新に成功している組織の最も顕著な例は、おそらく米軍(陸軍と海兵隊)だろう。

・私たちが慎重に一層ずつ秩序をつくろうと奮闘している一方で、生命体の秩序は創発 的に現れる。私たちはものごとを一つにまとめようと懸命に努力しているが、生命体は出入り自由に参加して協力し、自己組織化された構造を生み出す。

・秩序は、シ ステム全体が協調して働き、お互いを発見し、一緒に新しい能力を創造するというプロセスの要 素として現れるのだ。

・必要なのは、理解するという行為であり、その行為において、私たちは実際のプロセスとして の全体性を見る。そのプロセスは、適切に実行されれば、調和のとれた、秩序ある総合的な行為 をもたらす傾向があり、そこでは部分の分析は何の意味も持たない」

・「全体は、全体として、明確に限定された質量や電荷やスピンなどを持つように なるが、どの電子がこれの何に貢献しているかはまったく漠然としている。実際のところ、構成要素である電子は全体の要求を満たすように絶えず変化しているのだから、その個的な特性について話すことはもはや意味がない。

・透過性のある境界

・組織化のエネルギーが情報によって育まれるとき、生命は、より豊かに、前よりもっと創造的に進化しつづける。

カオス、そして意味というストレンジ・アトラク

・この世のはじまりは、形も中身もない、どこまでも深くぱっくり口を開けた裂け目を象徴する神、カオスだった。また形と安定を生む、母なる大地を象徴する女神、ガイアもいた。

ギリシャ神話では、カオスとガイアはパートナーであり、対立と共鳴の二重奏を奏で、私たちが知っているあらゆるものを創造する2つの根源的な力だった。

・カオスの中心は、現代のコンピュータ技術で明らかになった。カオスの状態にあるシステムの ふるまいをコンピュータの画面で追跡しながら観察するのは、催眠術でもかけられたような体験 だ。コンピュータが、システムの混沌としたふるまいの一瞬一瞬を画面の光の一点として表示し ながら、システムの変化を記録する。コンピュータの処理速度のおかげで、システムがどのよう に変化していくかすぐに観察できる。システムは、前に後ろにまったく予測のつかない猛烈な勢 いで動き、同じ地点には二度と現れない。だが観察していると、この無秩序なふるまいは、ある パターンに収束していき、観察者の目の前で画面に秩序が出現する。システムの無秩序なふる まいが、自分たち自身をある形につくりあげたのだ。この形が「ストレンジ・アトラクタ」であ り、画面に現れたものはカオスに内在する秩序だ

・カオスは予測可能性のない秩序である。

・カオスの形は、自己にフィードバックし、そのプロセスの中で変化する情報から現れてくる。これは、ニューサイエンスの大半で説明される反復とフィードバックのおなじみのプロセスであり、自己組織化やフラクタルの生成とも同じプロセスだ。

・パターンの定義は、かなり簡潔で、『一回以上起こるふるまい』とされている。

・こうした振る舞いの反復パターンは、組織の文化と呼ばれるものだ。

・パターンにまとまるのは、生命体の本質だ。この認識を持てば、新しいアプローチで組織変革に臨める。

・ふるまいは新しい価値観を唱えるだけでは変わらない。しかも少しずつしか変わらない。価値観に一致した行動ができるようになるには、どのように行動してい るのかについて、これまでとは比べものにならないほどはっきりした意識を持つようにしなけれ ばならないし、普通以上に内省的にならなければならない。さらに、昔の行動に舞い戻ってしま ったときに、お互いに相手が気づくのを手伝うことも必要だ。誰でも過去に逆戻りしてしまうこ とがあるだろう。それは避けられない。だが、そうなったとき、寛大な精神で助言し合うことに 同意しておこう。少しずっ、いろいろな出来事や危機に試されながら、新しい価値観の演じ方を 学んでいく。新しい行動パターンを発達させ、ゆっくりと、なりたいと言っていた自分たちになっていく。 こうした考え方は、優れたリーダーシップとは何かを単純明快に語っている。それは、私たち に基本的な管理原則を思い出させる。導きとなるビジョン、誠実な価値観、組織の信条――個人 が自分のふるまいを形づくるときの基盤となる自己準拠の思想だ。リーダーの仕事は、まず、こうした原則を具体化することであり、次に、組織が有言実行の模範となるよう努力することだ。

・リーダーの重要な仕事の一つは、組織が自らを知るよう徹底することだ。

・人が生きるための最大の動機は、『快楽を得ることでも苦痛を避けることでもなく、人生の意味を見出すことだ・・・』

・ここに来たのはなぜか。ここで働くようになったとき何を成し遂げようと夢見ていたか。

・結局、人が求めるものは意味だけだ。それ以外のものには魅力がなく、一生涯の行動を首尾一貫させる力を持つものはほかには何もない。

変化 -- 生命体の能力

・組織を機械として扱うのをやめないかぎり、成功率を上げることはとてもできないだろう。

・万物は己以外のあらゆる事物に依存して存在している。たとえば、この葉一枚にしても...... 地球、水、熱、海、木、雲、太陽、時間、空間――あらゆる要素がこの葉を存在たらしめてい る。これらの要素のうち何か一つでも欠ければ、葉は存在できないであろう。あらゆる存在は 同時発生の法則に依存している。一つの事物の源泉は万物なのである

・システムを健全にするには、ネットワークを強化することだ。システム変革の基本戦略はきわめて単純明快だ。変化が起こるためには、システムが、システム自体について、システム自体か らもっと学ぶ必要がある。つまり、システムが一つにまとまるプロセスが必要なのだ。システム 自体の発見を促し、同時に新しい関係を築くものであれば、まずどんなプロセスでもうまくいく だろう。結局は、システム全体がこの仕事に関わらなければならない。社外の専門家や小さなプ ロジェクトチームには成し遂げられない仕事なのだ。 私と同僚が組織のシステムを改善するうえで重視しているのは、システムが次の三つの重要な 領域で自己認識を育てられるように手助けすることだ。 第一に、人は組織もしくはコミュニティの基本的なアイデンティティを共有しなければならな い。私たちは誰か。何者になろうとしているのか。どうつき合っていくか。 第二に、人は新しい情報を共有しなければならない。ほかに何を知る必要があるか。この新し い情報はどこに行けば手に入るか。第三に、人は従来の境界にとらわれず、システム内のどこの 人とも関係を築くことができなければならない。この仕事を一緒にやるには、ほかには誰が適任か ? この三つの領域、アイデンティティ、情報、関係を突き詰めていくと、システムの自己認識が 向上する。そして、自分たちは何者なのかという事実を共有し、外部環境や顧客を共有し、シス テム内のどこの人とも関係を築けるようになる。こうしてできあがった新しい関係は、能力向上に貢献し、システムはより健全となる。

・どんな生き物も、変化を自己保存の手段とみなした場合だけ、変化する。

・あらゆる変化は意味の変化から生まれることを理解する必要がある。意味 は自己準拠のプロセスによってつくられる。自分の存在意義にとって意味のある変化だと判断し たときだけ、 変化する。自分をなりたい自分にしてくれる変化なのか。自分を維持するのに 必要だと考えているものをもっとたくさん得られるのか。 このダイナミクスを感じ取れるようになってくると、個人の変化も組織の変化も両方とも同じ 場所から始まると思うようになった。新しい意味が手に入るのかどうか、それは望ましいものな のかどうか判断するには、ある問題を十分に探求する必要がある。新しい視点、新しい考え方、 新しい形が、自分の存在意義は何かをもっとはっきりさせるのに役立つと信じなければ、人は変 わらない。組織もしくはコミュニティ全体のレベルの変化であれば、集団的な問いとして新しい 意味を探求しなければならない。

・自分たちに共通の価値観は何か。この意識を見つけ出すのに時間をかけなければ、個人の行動や組織全体が本当に変化することはない。

合気道創始者植芝盛平は、小柄な人だったが、自分の身長や体重の何倍もある相手の猛攻撃をさりげない動きで撃退することができた。植芝は完璧な軸を持ち、特異な方法で地にしっか り足をつけているように見えた。だが、それは真相ではない。植芝の能力は優れたバランスによ るものではなく、超一流レベルの自己認識によるものだ。植芝が述べているように、バランスが 崩れたことに瞬時に気づき、瞬時に軸に戻るのだ。 植芝の言葉は、生命に抗うのではなく、生命に調和して動くにはどうすればいいかを完璧に説 明している。まず、「軸」とはいったいどんなものかを知らなくてはいけない。つまり、自分は 何者か、自分の行動パターン、価値観、意思を知らなくてはいけない。自分のアイデンティティ と経験の基盤を熟知しておくこと、その上に立っているときの感覚をつかんでおくことが大前提 だ。だが、常にその軸上で完璧なバランスがとれると思ってはいけない。いつのまにか誤った行 動に陥ったり、生命のカオスによってバランスを崩したりすることがあると心得ておくのだ。し かし、軸からあまりにも離れてしまったときには、こうありたいという自分にすぐに戻れること もわかるだろう。 植芝は、注意の質についても強調していて、一瞬一瞬に参加しつづけなければいけないとい う。着々と変化していく性質を持つ生命は、計画や手段の陰に隠れるのをやめて、今、まさに 今、目の前で起きているものにもっと注意を払うべきだと要求する。

・生命はよきパートナーであり、その要求は過大ではない。大いなる変化の力は、私たち1人ひとりの中にあるのだ。

新しい科学的マネジメント

フレデリック・テイラーやフランク・ギルブレス、その多数の後継者たちの研究によって、 「科学的管理法」の時代が幕を開けた。これは、労働と労働者を計画管理の問題として扱う、現 在まで続く探求の始まりでもあった。時間動作研究や労働を非熟練労働者でも処理できる単純労 働に分業化することに大々的に力が注がれた。私はこの初期の論文を読むと、いまだに怖いと思 う。計画策定者は、管理効率の改善しか眼中になく、仕事をしている人間のことは完全に無視し ていた。現代のビジネスプロセス・リエンジニアリング(BPR)で行われきたような、単なる 無視ではなかった。それどころか蔑んでいた。労働者は愚かなものだという前提で、それによっ て業務に支障をきたさないようにするのが設計者の任務だった。 私たちマネジメントに携わっている者は、ここまでの思い込みや、そんな思い込みが生み出す 硬直した、断片化された構造からはさすがに脱却しているかもしれないが、科学に信頼の根拠を 置く姿勢は、程度の差はあれ、変わっていない。計画、評価、モチベーション理論、組織設計、 組織変革―まだまだあるが、どれも明らかに科学の影響を受けている。組織論研究者の研究報 告を聞くと、この伝統的な科学への依存がくっきりと表れていることがときどきある。専門家の 会議に出席して、一七世紀の科学観に根ざした研究報告を聞くという体験をいまだにしているの だ。私も含めた社会科学者は、それほどまでに科学者扱いされたいものなのかと驚かされる。物 理学から組織論に転じたウィリアム・バイグレイヴは、これを「物理学羨望」と呼んだ。数学 や物理学との関連がないと、信頼を失うのではないかと恐れているというのだが、これは当たっていると思う。

・ものごとを「正しく」し ようと真剣になりすぎるのをやめることができれば、これまでとは違う、もっと遊び心を持った 生き方ができるようになる。ルイス・トマスは、実験室で何か重大なことが起こっているかどう かは笑い声で判断できたと説明している。自然が明らかにする結果に驚き、事のはじめは常に びっくりするほどこっけいに見える。「笑い声が起こったら、そして誰かが『そんなのばかげてる!』と言ったら―実験はうまくいっており、おそらく見るに値する何かが実験室の中で起こり始めたということだ」

・科学研究を導く原則の一つは、あらゆるレベルで、自然には自己相似性があるように見える ということだ。自然の法則という原理は、科学から学びたいという私の願望をなおさら刺激す る。自然が特定の法則に基づいて、限りない多様性を生み出し、よく組織化されたシステムを築 いているのなら、その法則は人間の生活や組織にも当てはまる可能性が高い。人間だけが例外だ と考える理由はない。自己相似性に向かう自然の性質を知るにつけ、ジレンマを抱える現代の私 たちにとって正真正銘の手本になるはずだという確信が深まる。生物学や物理学の知識を利用す れば、現代のマネジメントの理論と実践のうち、どれがもっと研究するに値するか見分けやすく なる。科学は、もっと普遍的なレベルでメリットのある新しい問いとプロセスを発展させる味方 になってくれるだろう。私の場合、科学が今表現している世界を意識できるようになったおかげ で、ファストフードのようにお手軽な教祖のアドバイスから、本当に滋養のあるものを選り分け ることがうまくなった気がする。

現実の世界

・私が提案する新しいリーダーシップは、現実の世界ではうまくいくわけがないと言われることがよくある。

・言われたことをやるだけの受け身な指示待ち族があふれている。

・生命体の基本構成要素は関係であり、個々の個体ではない。

・ハリケーンカトリーナのリーダーシップの例。

・テロリスト・グループから学ぶ、ネットワークリーダーシップの例。

・その問題を生み出したのと同じ思考では、けっしてそれを解決できない by アルバートアインシュタイン

おわりに

・これは旅立ち。 すべてを後ろに置いて。 社会環境から離れ、先入観からも、定義からも、言葉からも、狭 い視界からも、期待からも離れて。 もはやかって意味したものを意味する関係も、記憶も、言葉も、 文字も期待せず。 一口で言えば、すべてに心を開くこと。――ラビ・ローレンス・クシュナー

・カオスの時代に住んでいる。この時代をどう生きていけばいいだろうか。 その答えは「ともに」である。私たちは今、お互いをこれまでとは違う意味で必要としてい る。自分の境界の中に隠れたり、独りでも生きていけるという信念にしがみついたりしている場 合ではない。考えを試す。学んだことを共有する。新しい視点で世界を見る。体験に耳を傾け る。すべてお互いが必要だ。失敗したら許し、他者の夢を自分に託し、自分の希望を失ったら他 者の希望を差し出す。やはりお互いが必要なのだ。

・この旅のどの瞬間でも、不確実さを心地よく感じ、カオスの役割を楽しむくらいでなくてはならない。どの瞬間でも、私たちはともにいなくてはならない。究極のところでは、お互いの存在 という恵みがある。お互いの好奇心と知恵と勇気がある。それに「生命」もある。生命に備わっ ている秩序を生み出す大きな力は、それとともに進むことを選べば、私たちをもっと好奇心旺盛 で、賢く、勇気ある存在にしてくれるだろう。