Joy, IncのMenloのRichさんのお話 Menlo BabysとMenloの採用プロセス
Joy inc著者のRichが来日し、話が聞けるということで、行ってきました。
RichがどうしてMenloを立ち上げたか、 立ち上げてから15年ほどの経緯、 現在 を語ってくれました。 ペア作業をしている、デイリーミーティングを全員(60-70名で13分以内)で行うなどは書籍Joy, Incにも書かれていますので、 書かれていなかった(…と思う)ところで琴線に触れた部分を列挙します。
ちなみにRGST2018でも貴重講演を行ってくれましたが、内容はほぼ一緒でした。
- 作者: リチャード・シェリダン,原田騎郎,安井力,吉羽龍太郎,永瀬美穂,川口恭伸
- 出版社/メーカー: 翔泳社
- 発売日: 2016/12/20
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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Joy, Inc.: How We Built a Workplace People Love
- 作者: Richard Sheridan
- 出版社/メーカー: Portfolio
- 発売日: 2013/12/26
- メディア: Kindle版
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Menlo Babys
何年か前に、チームメンバーが3ヶ月の育休から復帰するという話があった。 そのメンバーが、「復帰したいのだが、保育園が見つからない、祖父母も遠くにいるから預けられない、どうしたらいいか」という話をRichにした。 (会社には人事もいるが、メンバーがこの相談をRichに直接するのが、Richの人柄を表していると思う) Richの頭の中で、天使と悪魔が囁いた。 悪魔は、「人事に絶対怒られるぞ、これを言っちゃいけない」 天使は、「言っちゃえ、言っちゃえ、お前の会社だろ」 結局天使が勝った。Richは言った。 Rich:「連れてきちゃいなよ」 メンバ:「え?本当?今日いいの?」「毎日いいの?」「うるさいよ?赤ちゃんは泣くよ?」 Rich:「だってここはもう既にガヤガヤしててうるさいじゃないか。気にならないよ。僕だって3人の子供を育ててきた。赤ちゃんがどれくらいうるさいかわかってるよ。」 その日からMenloに赤ちゃんが出社することになった。 そこで、起こった面白い偶然。 赤ちゃんが泣くたびに、Menloのメンバーが代わる代わる面倒を見てくれるのだ。 Menlo全員で赤ちゃんを育てていった。 ときに顧客がMenloにきて、スプリント計画を立てる際に怒る(興奮する)ことがある。 でもスプリント計画に赤ちゃんも参加していると、皆自然と優しくなるんだ。興奮する顧客でさえもね。 そして、現在までこの10年間、Menlo Babysは20人。20人の赤ちゃんを育ててきたよ。 これ聞いてて恥ずかしながら涙が出てきた。なんていうんだろう。喜び。思いやり。優しさ。安心。全て詰まってる。そんな会社。あー、いいなー、としみじみ思うわけですよ。 心理的安全性と言う言葉があるけど、その言葉があるからそれをやるんじゃなく、そもそもそうなっているというか。なんだろう。 でも、社会生活をする上でこれって実は本当に大切なことで。でも忘れられてて。でも心の奥底にある人にはあって。 会社とか組織とか社会の波に揉まれて忘れちゃった大切なこと。 それをカタチにして実行するっていうことが素晴らしいなぁ。これが本当の優しさなのか。喜びか。
Menloの採用プロセス
ほぼ全ての作業をペアで行うことを前提としているMenloは、採用プロセスもユニークです。 1次試験: 30-50人ほどの採用希望者をまとめて試験をします。 全員を午後4時に集めます。 各希望者をペアにします。各ペアには試験管が1人つき、様子を観察します。 各ペアには、紙と一本の鉛筆が与えられます。 課題を出すので、20分間ペアで考えて答えを出します。 大切なのは、各ペアは、「相手を採用面接で合格させるにはどうすればいいか」、を常に考えて振る舞います。 20分を3回、ペアを入れ替えてやります。 3回終了後、試験官がOKと言った方のみ、2次試験へ進む権利が得られます。 2次試験: 2次試験では、一日Menloのメンバとして働いてもらいます。実際に一緒に仕事をするので、お給料がでます。 Menloのメンバとペア作業を、午前と午後でそれぞれ違う人とやります。 二次試験終了後、Menloメンバ2名と、採用希望者1名で、Good(いいね)、Bad(悪いね)、どっちかな~を投票します。(最大3票) どっちかな~のときは試験官同士相談してもらいます 3票いいねが集まったら3次試験へ進めます。 3次試験: 3次試験は、Menloのメンバとして3ヶ月(3週間だったかな)働いてもらいます。お給料がでます。 3ヶ月たって、採用希望者には、このまま続けるかどうかの判断をしてもらいます。 続けたいなら採用、続けたくないならそこまで、という感じです。 この採用プロセスは非効率ではないか、大変ではないか、との意見がありましたが、そんなことはなく、大変なのは1次面接の試験官をやってもらうときぐらいで、あとは実際のプロダクトを作りながらのペア作業だから 全く非効率ではないよ、とのことでした。 この採用プロセスにおいても、「ペア作業」のメリットが最大限生かされているわけです。 技術力云々ではなく、コミュニケーション能力、とくにサーバント・リーダーシップが発揮できるかが問われるすごい採用試験だな、と思いました。 「ペアの相手を合格させるにはどうするか」を考える必要があるからです。 利己主義な人には出来ないでしょう。そして、隠そうとしても、限られた時間では人間の本質というものが出てしまうもの。 常日頃からサーバントな人でないと、合格できないように思います。