Training for D-Day

ブログの内容は個人の見解であり、所属する企業を代表するものではありません。

スクラム スクラムガイドとスクラムの奴隷

スクラムは、理解は容易ですが、習得が困難です。
習得または実行と言い換えてもいいかも知れません。「きっちりした」スクラムを実行することはものすごいエネルギーが必要です。

スクラムガイドにも書いてあります。
スクラムの一部だけを導入することも可能だが、それはスクラムとは言えない。」

http://www.scrumguides.org/docs/scrumguide/v1/Scrum-Guide-JA.pdf


これは非常に厳しい言葉です。
おそらくですが、完璧なスクラムを実践している職場は非常に少ないのではないでしょうか。
スクラムは企業文化や組織風土、メンバーのスキルに依存する部分も多々あるため、スクラムを自身の企業や組織に適用するために”一部変えてしまう”ことがあると思います。

一方で、スクラムの奴隷になるな」という言葉もあります。
出典はわかりませんが、スクラムの実践者たちが講演しているセミナー等ではよく聞く言葉です。
この真意はわかりませんが、「スクラムスクラムガイドのまま進めすぎようと躍起になると痛い目に会うよ」ということだと認識しています。(違ったらごめんなさい)
「ミイラ取りがミイラになる」、と似ているのかなと感じました。(違うか(汗

ガイドでは、スクラムというものをきっちりと定義し、それから逸脱してはスクラムとは言えないと謳い、
実践者たちは「スクラムの奴隷になるな」と謳っています。
どちらを信じれば良いのでしょうか?

私は、「どちらも信じる」だと思います。

スクラムガイドは非常に軽量です。もしスクラムを実践しようとするなら、すべてを暗記して、ソラで説明できるぐらい真剣にスクラムを理解するべきです。
スクラムには19の要素があると言われています。以下の19の要素が散りばめていないと、スクラムではないということになります。

要素 日本語 説明
Transparency 透明性 “経験的プロセスで重要なのは、結果責任を持つ者に対して見える化されていることである。透明性とは、こうしたことが標準化され、見ている人が共通理解を持つことである。 例: プロセスの用語を参加者全員で共有している。 作業をする人とその作成物を受け取る人が「完成」の定義を共有している。RDBの世界にあるOne Fact In One Placeもこれに近いです。共有すべき情報は1箇所にあること。それが全員に周知できている状態であることが大切です。
Inspection 検査 スクラムのユーザーは、スクラムの作成物や進捗を頻繁に検査し、変化を検知する。ただし、検査を頻繁にやりすぎて作業の妨げになってはいけない。熟練の検査人が念入りに行えば、検査は最大の効果をもたらす。
Adaptation 適応 プロセスの不備が許容値を超え、成果となるプロダクトを受け入れられないと検査人が判断した場合は、プロセスやその構成要素を調整する必要がある。調整はできるだけ早く行い、これ以上の逸脱を防がなければいけない。
Prodcut Owner プロダクトオーナー プロダクトオーナーは、開発チームの作業とプロダクトの価値の最大化に責任を持つ。その作業は、組織・スクラムチーム・個人によって大きく異なる。プロダクトオーナーは、プロダクトバックログの管理に責任を持つ1人の人間である。
Development Team 開発チーム 開発チームは、各スプリントの終わりにリリース判断可能な「完成」したプロダクトインクリメントを届けることのできる専門家で構成されている。インクリメントを作成できるのは、開発チームのメンバーだけである。 開発チームは、自分たちの作業を構成・管理する。そのことは組織からも認められている。その相乗効果によって、開発チーム全体の効率と効果が最適化される。
Scrum Maser スクラムマスター スクラムマスターは、スクラムの理解と成立に責任を持つ。そのためにスクラムマスターは、スクラムチームにスクラムの理論・プラクティス・ルールを守ってもらうようにする。 スクラムマスターは、スクラムチームのサーバントリーダーである(訳注:メンバーが成果を上げるために支援や奉仕をするリーダーのこと)。 スクラムマスターは、スクラムチームとやり取りをするときに役に立つこと/立たないことをスクラムチームの外部の人たちに理解してもらう。スクラムマスターは、こうしたやり取りに変化をもたらすことで、スクラムチームの作る価値を最大化する。
Sprint スプリント スクラムの中心はスプリントである。これは、「完成」した、利用可能な、リリース判断可能なプロダクトインクリメントを作るための、1か月以下のタイムボックスである。スプリントは、開発作業を行う連続した期間である。スプリントが終了すると、新しいスプリントが開始される。
Sprint Planning スプリントプランニング スプリントの作業はスプリントプランニングで計画する。これはスクラムチームの共同作業だ。 スプリントが1か月の場合、スプリントプランニングのタイムボックスは最大で8時間である。スプリントの期間が短ければ、スプリントプランニングの時間も短くすることが多い。スクラムマスターは、参加者に目的を理解してもらうようにする。スクラムマスターは、スクラムチームにタイムボックスを守るように伝える。"
Daily Scrum デイリースクラム デイリースクラムとは、開発チームが活動の速度を合わせ、次の24時間の計画を作る15分間のタイムボックスのイベントである。前回のデイリースクラムから行った作業の検査と、次回のデイリースクラムまでに行う作業の予想を行う。デイリースクラムは毎日、同じ時間・場所で開催する。これは、複雑にならないようにするためである。
Sprint Review スプリントレビュー スプリントレビューとは、スプリントの終わりにインクリメントの検査と、必要であればプロダクトバックログの適応を行うものである。
Sprint Retrospective スプリントレトロスペクティブ スプリントレトロスペクティブは、スクラムチームの検査と次のスプリントの改善計画を作成する機会である。
Sprint Stop スプリントストップ スプリントを中止する
Product Back Log Refinement プロダクトバックログリファインメント 中・長期のProduct Back Logを考える。 次のSprint以降の話をする。今のSprintは変えない。 (スクラムをやると未来が見えなくなると言う人がいるが、大抵これをやっていない)
Product Back Log プロダクトバックログ プロダクトバックログは、プロダクトに必要なものがすべて並べられた一覧であり、プロダクトに対する変更要求の唯一の情報源である。プロダクトオーナーは、プロダクトバックログの内容・可用性・並び順に責任を持つ。
Sprint Back Log スプリントバックログ スプリントバックログは、スプリントで選択したプロダクトバックログアイテムと、それらのアイテムをプロダクトインクリメントにして届け、スプリントゴールを達成するための計画を合わせたものである。スプリントバックログは、開発チームが作成するインクリメントに含まれる機能と、その機能を「完成」インクリメントにして届けるために必要な作業の予想である。
Potentially Shippable Increment 出荷判断可能インクリメント インクリメントとは、これまでのインクリメントの価値と今回のスプリントで完成したプロダクトバックログアイテムを組み合わせたものである。スプリントの終わりには、新しいインクリメントが「完成」していなければならない。つまりインクリメントが動作する状態であり、スクラムチームの「完成」の定義に合っていることを意味する。
Impediment List インペディメントリスト スクラムからみた課題・障害・リスクを管理するリスト。 例:セレモニーが長い チームが安定してきたが、出荷できない
Acceptance Criteria 受け入れ条件 プロダクトオーナーがスプリントレビュー時にプロダクトを受け入れる条件を明記したもの。Prodcut Back Logに記載する。
Definition of Done 完了の定義 プロダクトバックログアイテムやインクリメントの「完成」を決めるときには、全員がその「完成」の意味を理解しておかなければいけない。スクラムチームによってその意味は大きく異なるが、作業の完了についてメンバーが共通の理解を持ち、透明性を確保しなければいけない。これは、スクラムチームの『「完成」の定義』と呼ばれ、プロダクトインクリメントの作業が完了したかどうかの評価に使われる。


その上で「スクラムの奴隷になるな」だと思います。
ただ、私が思うに、上記19の要素は全て必須だと思いますし、透明性・検査・適応という原則を守ろうとすると必然的についてまわる要素だと考えます。

スクラムは、非常に楽しいですが、反面、非常に大変です。
1スプリント2週間の場合、
まるで隔週連載のマンガ家になった気分だとチーム内から声が上がったことがあります。うーん、確かに。
2週間で動くものを作りこむプレッシャーたるや相当のものだと思います。
ただそれが、チーム、人間の限界ギリギリの能力を発揮してくれるのかも知れません。締め切り効果というやつです。

スクラムは適切に運用されればチームの力をかなり向上させ、顧客、チーム内においても透明性を確保し、コミュニケーションを増大させてくれると確信しています。
そして、それは非常に楽しく、厳しいです。
チームのメンバーの素養としては、Mでないとやっていけないかも知れません。(嘘